AIオムニバスで機械メーカーは何が変わるか
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2026年7月27日に発効したAIデジタルオムニバス規則(EU)2026/1744は、機械メーカーにとってAI規則の位置付けを大きく変えました。機械に組み込むAIについて、AI規則の高リスク要件を直接適用するのではなく、機械規則の中で扱う仕組みに切り替わったためです。
1. 何が変わったか:Section AからSection Bへ
AI規則(規則(EU)2024/1689)は、製品安全法令の対象となる製品の安全部品として使われるAIを「高リスクAIシステム」に分類します(第6条第1項)。その製品安全法令は附属書Iに列挙され、二つのグループに分かれています。
| Section A | Section B | |
|---|---|---|
| AI規則の適用 | 高リスクの要件(第III章第2節)、適合性評価などがそのまま適用される | 第6条第1項、第60a条、第102条〜第112条のみ適用。要件は各分野の法令に取り込まれる |
| 主な法令 | 医療機器、玩具、昇降機、無線機器など | 民間航空、自動車、農林業用トラクターなど |
改正前、機械(当時は機械指令)はSection Aに掲げられていました。2026/1744により、機械はSection Aから削除され、機械規則(EU)2023/1230としてSection Bに追加されました。
その結果、機械の安全部品として使われ高リスクに分類されるAIシステムには、AI規則のうち第6条第1項(高リスクの分類)、第60a条(実環境試験)、第102条〜第112条だけが適用されます(改正後のAI規則第2条第2項)。AI規則上の提供者・導入者の義務、AI規則に基づくノーティファイドボディの関与、AI規則のEU適合宣言やEUデータベースへの登録は、機械の安全部品としてのAIには直接は求められません。
2. 代わりに機械規則に追加されること
2026/1744の第3条は、機械規則に次の規定を加えました。
- AI要件の追加(機械規則第8条):欧州委員会は、高リスクAIシステムに当たる安全部品・機械について、AI規則の要件(第III章第2節と第17条・第19条・第72条・第73条)を反映した安全衛生要件を、委任法令で機械規則の附属書IIIに追加します。この委任法令は2028年8月2日までに適用されることになっています。
- 適合の推定(機械規則第20条第10項):機械規則にAI関係の整合規格・共通仕様ができるまでは、AI規則の整合規格・共通仕様に適合する高リスクAIシステムは、附属書IIIのAI関係の要件に適合していると推定されます。
つまり、AI規則の要件の中身(リスクマネジメント、データガバナンス、記録、透明性、人による監視、正確性・堅牢性など)が不要になったわけではありません。それらは今後、機械規則の必須安全衛生要件として求められることになります。
3. 機械規則で最初から求められている要件は変わらない
2026/1744とは関係なく、機械規則は2027年1月20日から、AIや自己進化する挙動を持つ機械について独自の要件を定めています。
- 第三者による適合性評価:機械学習を使って安全機能を確保する安全部品、及びそのような組込みシステムを持つ機械(当該システムに関してのみ)は、附属書I Part A に掲げられ、ノーティファイドボディの関与が必須です。
- 附属書IIIの要件:自己進化する挙動やロジックを持つ機械には、定められたタスクと動作範囲を超えて動作しないこと、安全に関わる意思決定のデータを記録して1年間保持すること、常に修正できることなどが求められます(附属書III 1.2.1)。人と機械の相互作用(1.1.6)やリスクアセスメント(一般原則)でも、自己進化する挙動を考慮することが求められます。
これらは機械規則そのものの要件なので、2026/1744の後もそのまま適用されます。詳しくは機械指令から機械規則へ 主な変更点のまとめを参照してください。
4. 「安全部品」の定義が絞られた
2026/1744は、AI規則の「安全部品」の定義も改正しました。構成部品は、その意図された目的が人の健康及び安全又は財産に対するリスクを防止し又は軽減することである場合に、安全機能を果たすとされます(改正後のAI規則第3条第14号)。
前文では、ユーザー支援、性能の最適化、効率化、自動化、利便性、品質管理の安全に関連しない側面のためだけのAIは安全機能を果たさないこと、製品に組み込まれているだけでは安全部品にならないことが説明されています。機械に組み込むAIの多く(例えば、加工条件の最適化や外観検査)は、この定義では安全部品に当たらず、高リスクAIシステムにも分類されないことになります。
5. 高リスクではないAIはどうなるか
第2条第2項の特例は、機械の安全部品として高リスクに分類されるAIシステムについてのものです。高リスクに分類されないAIシステム(例えば、オペレーターと対話するチャットボットや、画像を生成する機能)には、透明性の義務(第50条)など、AI規則の一般的な規定が引き続き適用されえます。機械に搭載するAI機能ごとに、高リスクかどうかを切り分けて確認する必要があります。
6. 日程
| 日付 | 内容 |
|---|---|
| 2026年7月27日 | 2026/1744の発効。機械規則がAI規則の附属書I Section Bに移る |
| 2027年1月20日 | 機械規則の適用開始(附属書I Part A の機械学習の区分、附属書IIIの自己進化に関する要件を含む) |
| 2028年8月2日 | AI関係の要件を機械規則の附属書IIIに追加する委任法令の適用期限 |
7. 機械メーカーが見ておくこと
- 2027年1月20日の機械規則の要件:AIを使った安全機能を持つ機械は、まず機械規則の附属書I Part A と附属書IIIへの対応が必要です。
- 委任法令の草案:附属書IIIに追加されるAI要件の内容は、委任法令の草案の公表と協議で明らかになります。
- AI規則の整合規格:機械規則にAI関係の整合規格ができるまでは、AI規則の整合規格が適合の推定の手段になります。
- 機械のノーティファイドボディの見解:機械のノーティファイドボディの欧州調整グループは、2026/1744以前に、機械学習の区分に関する使用勧告(RfU 00.514など)を出しています。改正を受けた見直しの可能性があります。
本記事は、2026/1744と機械規則・AI規則の条文にもとづいています。本サイトのAI規則・機械規則の条文ページは、統合版が公開されるまで改正前の原文を掲載しています。