製品をEUに出荷するメーカーと包装規則(PPWR)

公開日:

包装・包装廃棄物規則(PPWR、規則(EU)2025/40)は、2026年8月12日から適用されています(第71条)。旧包装指令94/62/ECは、一部の規定を除き同日に廃止されました(第70条)。

PPWRの対象は、食品や日用品の包装だけではありません。工業製品を出荷するときの段ボール箱、木箱、パレット、緩衝材、ストレッチフィルムも「包装」です。製品をEUに出荷するメーカーにとっては、製品そのものの法令とは別に、包装についての適合性評価と記録が求められるようになったことが最も大きな変化です。

この記事では、製品を包装してEUに出荷する側の立場から、確認が必要な義務を整理します。

1. 包装の種類

PPWRは、包装をその機能によって区別しています(第3条)。

種類 定義の要点 例
販売包装 販売時点でエンドユーザーに対する販売単位を構成する包装 製品の個装箱
グループ包装 一定数の販売単位をまとめる包装 複数の個装箱をまとめる外箱
輸送包装 取扱いと輸送のための包装(コンテナを除く。) 出荷用の段ボール箱、木箱、パレット、ストレッチフィルム
電子商取引包装 通信販売でエンドユーザーに配送するための輸送包装 通販の配送箱

どの種類に当たるかで、表示、空隙率、再使用目標などの義務が変わります。

2. 誰が義務を負うか

包装の「製造者」

PPWRの「製造者」は、包装又は包装された製品を製造する者です。包装された製品を自己の名称又は商標で設計させ、又は製造させる者も製造者に当たります(第3条第13号)。製品を自社で包装して自社の名称で出荷するメーカーは、その包装の製造者になります。

製造者は、包装が要件を満たすことを確保し、適合性評価を行い、技術文書とEU適合宣言を作成します(第15条)。EU域外の製造者の包装を上市する輸入者は、製造者がこれらを行ったことを確認しなければなりません(第18条)。

拡大生産者責任の「生産者」

包装廃棄物の回収とリサイクルの費用を負担するのは「生産者」です。加盟国に設立され、その国で包装又は包装された製品を初めて入手可能にする者などが該当します(第3条第15号)。日本から製品を輸出する場合は、通常、EU側の輸入者がその国の生産者に当たります。

注意が必要なのは、エンドユーザーではないのに包装された製品を開梱する者も生産者になりうる点です(第3条第15号(e))。例えば、EUの販売子会社が機械を開梱して据え付けてから顧客に引き渡す場合、その子会社が輸送包装の生産者として扱われる可能性があります。

生産者は、包装を入手可能にする各加盟国で登録しなければならず、登録していない国では包装された製品を入手可能にできません(第44条、第45条)。

3. 2026年8月12日から求められること

適合性評価と技術文書、EU適合宣言

包装を上市する前に、製造者は附属書VIIの手続で適合性評価を行い、技術文書を作成し、EU適合宣言を作成しなければなりません(第15条、第38条、第39条)。

機械などのEU適合宣言書と併記するか

機械指令や機械規則のEU適合宣言書に、包装のPPWR適合を併記することは、第39条第3項により可能です。欧州委員会のFAQ(2026年)でも、まとめる場合には関係する法令を明記し、包装と包装された製品の評価を明確に区別することが求められています。ただし、併記は義務ではなく、次の違いがあるため、実務上は別々に作成するほうが管理しやすい場合が多いと考えられます。

整合規格の状況

PPWRの要件に対して適合の推定を与える整合規格は、2026年10月時点では欧州連合官報に掲載されていません(第36条)。旧包装指令の整合規格(EN 13427〜EN 13432など)は、2026年8月12日以降、PPWRの適合の推定を与えません。例外として、旧指令の最小化の必須要件は2029年12月31日まで引き続き適用され(第70条第1項(b))、その範囲ではEN 13428による推定が続くと解されています。

整合規格がない間は、適用した技術的方法(既存のEN規格を参考にする場合を含む。)を技術文書で説明し、要件への適合を自ら示す必要があります。欧州委員会は、最小化の規格の更新など、欧州標準化機関への規格作成要請を進めています(第10条第3項)。

現時点で適合性評価の対象となる要件の中心は、次の物質の制限です。リサイクル可能性や最小化などの設計要件は、2030年以降に順次加わります。

重金属の制限

包装又は包装構成部品に含まれる鉛、カドミウム、水銀、六価クロムの濃度の合計は100 mg/kg以下でなければなりません(第5条第4項)。旧包装指令から引き継がれた要件ですが、PPWRでは技術文書で証明することが明記されています(第5条第6項)。緩衝材、塗装した木箱、インク、テープなども包装構成部品に含まれるため、包装資材の供給者から情報を入手しておく必要があります。包装資材の供給者には、製造者に必要な情報と文書を提供する義務があります(第16条)。

なお、食品接触包装には、PFASの濃度制限も同日から適用されています(第5条第5項)。

4. 今後の主な適用日

時期 内容 根拠
2028年2月12日 販売包装の空隙を、製品の保護を含め機能に必要な最小限にする 第24条第4項
2028年8月12日以降 材料構成を示す調和されたラベル(実施法令の発効から24か月後のほうが遅ければその日から)。輸送包装は対象外(電子商取引包装は対象) 第12条第1項
2030年1月1日 包装の重量・容積を機能に必要な最小限にする設計 第10条
2030年1月1日以降 グループ包装・輸送包装・電子商取引包装の空隙率を50%以下に(方法論の実施法令の発効から3年後のほうが遅ければその日から) 第24条第1項
2030年1月1日以降 リサイクル設計の等級A〜Cに入らない包装は上市できない(委任法令の発効から24か月後のほうが遅ければその日から) 第6条
2030年1月1日 輸送包装の再使用目標(パレット、箱、クレートなどの40%以上を再使用システム内の再使用可能な包装に) 第29条

調和されたラベルの仕様を定める実施法令は、2026年8月12日までに採択されることになっていましたが、期限までに採択されていません。ラベルの適用日はこの実施法令に連動するため、確定した日付は実施法令の公表を待つ必要があります。

空隙率の考え方

空隙とは、外側の包装の総容積と、中に入っている販売包装の容積との差です。紙片、エアクッション、気泡緩衝材、発泡充填材などで満たされた空間も空隙とみなされます(第24条第3項)。緩衝材を詰めれば空隙ではなくなる、という扱いではない点に注意が必要です。空隙率の算定方法は、欧州委員会が実施法令で定めることになっており、形の不規則な製品や壊れやすい製品などの特殊性も考慮されます(第24条第2項)。

5. 機械など大型製品の輸送包装

2030年からの輸送包装の再使用目標(第29条)には、製造業者にとって重要な適用除外があります(第29条第4項)。

大型機械を専用の木箱や架台で出荷する場合は、再使用目標の対象外になりえます。ただし、適用除外は再使用目標についてのものです。重金属の制限、適合性評価とEU適合宣言、最小化、空隙率など、他の要件は引き続き適用されます。

6. 製品メーカーにとってのポイント


本記事は、PPWRの条文と2026年10月時点の公表情報にもとづいています。拡大生産者責任のための認定代理人の義務の一部を停止する改正案が審議されていますが、本記事の執筆時点では採択されていません。

次に読む