電池を組み込んだ製品のメーカーとバッテリー規則
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バッテリー規則(EU)2023/1542は、電池メーカーだけの規則ではありません。電池を組み込んだ機器、電動工具、機械、軽輸送手段を販売するメーカーにも、製品の設計や販売体制に直接かかわる義務があります。旧電池指令2006/66/ECと比べて、要件の範囲も、電池の区分による違いも大きくなりました。
この記事では、電池を調達して自社製品に組み込む側の立場から、確認が必要な義務を整理します。電池そのものの性能要件やカーボンフットプリントなど、主に電池メーカーが対応する要件は法令の概要を参照してください。
1. まず電池の区分を確認する
義務の多くは電池の区分によって変わります(第3条)。
| 区分 | 定義の要点 | 組込み製品の例 |
|---|---|---|
| 携帯用電池 | 密閉型で5 kg以下、産業用に特に設計されておらず、他の区分に当たらないもの | 家電、電子機器、電動工具 |
| 産業用電池 | 産業用に特に設計されたもの、又は5 kgを超えるもの(他の区分に当たらないもの) | 機械、無人搬送車、定置型蓄電システム |
| LMT電池 | 電動自転車、電動キックボードなど軽輸送手段の走行用 | 軽輸送手段 |
| SLI電池 | 車両等の始動・照明・点火用 | 車両、一部の移動機械 |
| 電気自動車用電池 | 道路走行用のハイブリッド車・電気自動車の走行用 | 電気自動車 |
同じ機器でも、電池の重量や設計目的によって区分が変わることがあります。区分の判断は、以降のすべての義務の前提になります。
産業用電池は容量2 kWhが境目
産業用電池は、容量が2 kWhを超えるかどうかで、追加の要件がかかるかが分かれます。LMT電池と電気自動車用電池は、容量にかかわらず同じ要件の対象です。
| 要件 | 対象 | 適用 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 電気化学的性能・耐久性の文書の添付 | 2 kWh超の充電式産業用電池、LMT電池、電気自動車用電池 | 2024年8月18日から | 第10条第1項 |
| 性能・耐久性の最低値 | 2 kWh超の充電式産業用電池(外部蓄電型を除く) | 2027年8月18日又は委任法令の発効から18か月後のいずれか遅い日から | 第10条第2項 |
| カーボンフットプリントの宣言・性能クラス・最大閾値 | 2 kWh超の充電式産業用電池、LMT電池、電気自動車用電池 | 委任法令・実施法令の採択に連動して段階的に | 第7条 |
| 再生材含有の文書 | 2 kWh超の産業用電池(外部蓄電型を除く)、電気自動車用電池、SLI電池 | 2028年8月18日又は委任法令の発効から24か月後のいずれか遅い日から | 第8条第1項 |
| バッテリーパスポート | 2 kWh超の産業用電池、LMT電池、電気自動車用電池 | 2027年2月18日から | 第77条第1項 |
2 kWh以下の産業用電池には、これらの要件はかかりません。一方、容量にかかわらず、すべての電池に有害物質の制限、適合性評価とCEマーキング、表示、生産者登録と回収の義務がかかります。
なお、定置型蓄電システムには、容量にかかわらず安全要件(第12条)と、電池管理システムでの劣化状態データの保持(第14条)が求められます。電池管理システムでの劣化状態データの保持は、LMT電池と電気自動車用電池にも求められます。
2. 適用スケジュール
| 日付 | 適用される内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 2024年2月18日 | 規則の原則的な適用開始 | 第96条 |
| 2024年8月18日 | 電池の適合性評価(第17条)と、ノーティファイドボディに関する第VI章 | 第96条 |
| 2025年8月18日 | 使用済み電池の管理(第VIII章:生産者登録、拡大生産者責任、回収)、分別回収記号の表示 | 第96条、第13条 |
| 2026年8月18日以降 | 一般情報・容量などのラベル表示。実施法令の発効から18か月後のほうが遅ければ、その日から | 第13条 |
| 2027年2月18日 | 携帯用電池・LMT電池の取外し・交換可能性、QRコード、バッテリーパスポート | 第11条、第13条、第77条 |
| 2027年8月18日 | サプライチェーン・デューディリジェンス(規則(EU)2025/1561で2025年8月18日から延期) | 第47条〜第53条 |
ラベル表示は、欧州委員会が調和された仕様を定める実施法令の採択時期によって適用日が後ろにずれる仕組みです。実際の適用日は、実施法令の公表状況とあわせて確認する必要があります。
3. 取外し・交換可能性(携帯用電池・LMT電池)
2027年2月18日から、携帯用電池を組み込んだ製品を上市する者は、電池が製品の寿命期間中いつでも、最終利用者が容易に取り外し、交換できるようにしなければなりません(第11条第1項)。電池メーカーではなく、製品のメーカーにかかる設計要件です。
- 「容易に取り外せる」の意味:市販の工具で取り外せることです。特殊工具や独自工具が必要な場合は、それを製品とともに無料で提供しなければなりません。熱や溶剤を使わないと外せない設計は認められません。
- 説明書:電池の使用、取外し、交換に関する説明書と安全情報を製品に添付し、ウェブサイトでも恒久的に公開します。
- 例外:水しぶきや水没に定期的にさらされる環境で主に使う機器(安全上必要な場合に限る)、業務用の医療画像・放射線治療機器、体外診断用医療機器は、独立した専門家による交換を前提に設計できます(第2項)。電源供給の継続性やデータの完全性のために製品と電池の恒久的な接続が必要な場合は、第1項自体が適用されません(第3項)。
- LMT電池:最終利用者ではなく、独立した専門家が電池と電池パック内の個々のセルを取り外し、交換できることが求められます(第5項)。
- 予備部品:交換用の電池を、そのモデルの最後の製品を上市してから少なくとも5年間、合理的で差別のない価格で入手できるようにします(第7項)。
- ソフトウェアによる妨害の禁止:互換性のある電池への交換を、ソフトウェアで妨げてはなりません(第8項)。
なお、第11条は産業用電池には適用されません。機械に組み込む5 kgを超える電池などは、この設計要件の対象外です。
4. 生産者としての登録と回収(拡大生産者責任)
バッテリー規則では、機器に組み込まれた電池も含めて、加盟国の市場に初めて電池を供給する者を「生産者」と定義しています(第3条第47号)。電池を組み込んだ製品を販売すると、製品のメーカーや輸入者が電池の生産者に当たることになります。
- 加盟国ごとの登録:生産者は、電池を初めて市場で提供する各加盟国の生産者登録簿に登録しなければなりません。登録していない生産者は、機器に組み込まれた電池を含め、その国で電池を提供できません(第55条)。
- 誰が生産者になるか:加盟国に設立され、他の加盟国や第三国からの電池をその国で初めて供給する者が生産者になります(第3条第47号(c))。日本から製品を輸出する場合は、通常、EU側の輸入者がその国の生産者に当たります。EU域外から最終利用者に直接通信販売する場合は、域外の事業者自身が生産者になり(同号(d))、拡大生産者責任のための認定代理人を任命する必要があります。
- 回収と費用負担:生産者は、自らが供給した区分の使用済み電池の回収と処理の費用を負担します(第56条)。産業用電池については、最終利用者から使用済み電池を無料で引き取る義務があります(第61条)。生産者責任組織に委託して履行することもできます。
登録の手続や手数料は加盟国ごとに異なります。販売先の国が増えるほど、輸入者・販売店との間で、誰がどの国の生産者として登録するかを決めておくことが重要になります。
5. 電池への表示
| 表示 | 適用 | 根拠 |
|---|---|---|
| 分別回収記号(車輪付きごみ箱に×印) | 2025年8月18日から、すべての電池 | 第13条第4項、附属書VI |
| Cd・Pbの化学記号 | カドミウム0.002%超、鉛0.004%超を含む電池 | 第13条第5項 |
| 一般情報・容量などのラベル | 2026年8月18日又は実施法令の発効から18か月後のいずれか遅い日から | 第13条第1項〜第3項 |
| QRコード | 2027年2月18日から、すべての電池 | 第13条第6項 |
電池が小さくて表示できない場合
表示は原則として電池本体に付けますが、小型の電池には次の扱いが定められています。
- ラベルとQRコード:電池の性質や大きさから本体への印刷・刻印が不可能又は不適当な場合は、包装と、電池に添付される文書に付けます(第13条第7項)。
- 分別回収記号:記号は電池の最大面の3%以上(円筒形セルは表面積の1.5%以上)、最大5×5 cmの大きさが必要です。この計算で記号が0.47×0.47 cmより小さくなる電池は、本体への表示は不要で、代わりに1×1 cm以上の記号を包装に印刷します(第13条第4項)。
- CEマーキング:電池の性質から本体への貼付が不可能又は不適当な場合は、包装と、電池に添付される文書に貼付します(第20条第1項)。
機器に組み込んだ状態で出荷する小型電池の場合、どの包装・文書に表示を付けるかは、製品の包装や取扱説明書の設計にもかかわります。電池メーカーと役割分担を決めておく必要があります。
調達する電池にこれらの表示があるか、電池メーカーとの間で確認しておく必要があります。
6. 調達する電池そのものの適合
電池は、バッテリー規則に従って適合性評価を受け、EU適合宣言書を作成し、CEマーキングを付ける必要があります(第17条、附属書VIII)。これは主に電池の製造業者の義務ですが、組み込む側としては、調達する電池について次の書類を入手しておくと、自社製品の技術文書や市場監視当局への対応がしやすくなります。
- 電池のEU適合宣言書
- 電池の区分と化学系(生産者登録や回収の区分に必要)
- 2027年2月18日以降に上市する電池については、QRコード、及び対象電池(LMT電池、2 kWhを超える産業用電池、電気自動車用電池)のバッテリーパスポートの扱い
7. サプライチェーン・デューディリジェンス
電池を上市する経済事業者には、コバルト、天然黒鉛、リチウム、ニッケルとその化合物について、サプライチェーン上の人権・環境リスクに対処するデューディリジェンスの方針と体制が求められます(第47条〜第53条)。
- 対象外となる事業者:前々会計年度の純売上高が4,000万ユーロ未満で、連結で4,000万ユーロを超えるグループに属さない経済事業者は対象外です(第47条)。
- 適用日:当初は2025年8月18日でしたが、規則(EU)2025/1561により2027年8月18日に延期されました。義務の範囲や内容は変わっていません。
8. 機械メーカーにとってのポイント
産業用電池を組み込む機械の場合、第11条の取外し・交換可能性は適用されませんが、生産者登録と回収(第4節)、表示(第5節)は対象になります。2 kWhを超える産業用電池を使う場合は、バッテリーパスポートの対象にもなります。
また、電池は機械規則の対象製品の構成部品であると同時に、バッテリー規則の対象製品でもあります。機械のEU適合宣言書とは別に、電池についてもバッテリー規則に基づく適合が求められる点に注意が必要です。
本サイトのバッテリー規則の条文は、官報掲載時の原文にもとづいています。規則(EU)2025/1561によるデューディリジェンスの適用日の延期などの改正は、条文ページには反映していません。最新の条文は、EUR-Lexの統合版(consolidated version)で確認してください。